国外のウイグル人が直面する究極の選択

Huffington Post, 25.01.2019

中国北西部の新疆ウイグル自治区で育ったヌルさん(仮名・男性)にとって、日本に留学することは長年の夢だった。2015年、その夢が叶い、両親に別れを告げ、新疆ウイグル自治区を後にした。前途に過酷な試練が待ち受けているなど、露にも思わずに。

2017年4月、母親から気がかりな電話があった。「警察がお前に帰国命令を出した」と。その後にきた父親からの電話は、さらに切羽詰ったものだった。「帰国するんじゃない。警察から書類を求められても、絶対、送るな。こっちに連絡するのは危険だ」。ヌルさんは困惑し、身震いを覚えた。

このような体験は、ヌルさんだけではない。国外にいるウイグル人の多くが、同じような抜き差しならない状況に置かれている。彼らは、国家の手を逃れるためだけに、海外へ逃れた。主にイスラム教を信仰するウイグル人は、中国では、民族的にも宗教的にも少数派で、国家による弾圧の対象だからだ。

多くの証拠が示すように、2017年始めから、ウイグル人やカザフ人など100万人もの少数民族が、当局の手で強制収容施設に送られてきた。「拘束は再教育」あるいは「職業訓練のためだ」と当局は主張するが、拘束された人たちは、拷問などさまざまな違法な扱いを受けてきた。

この事態の中で、国外にいるウイグル人が帰国した場合、多大なリスクが伴う。家族には会えても、恣意的拘束を受けるおそれがある。

収容所か生き別れか

前述のヌルさんの父親の警告は、帰国後の拘束を案じたものだった。とはいえ、日本に留まると一生、家族と会えないおそれがある。帰国して収容所送りになるか、国外に留まり家族と生き別れになるか――究極の選択を迫られるのだ。

ヌルさんの母親は、息子に電話する以前から、警察から何度も、息子が日本に留学していることを証明する書類の提出を求められていた。ヌルさん本人も、東京の駐日中国大使館から、書類を入手して実家に送るよう言われた。ヌルさんは、不安の余り警察とは一切連絡をとっていない。

アムネスティが話をした他の在日ウイグル人たちも、同様の苦境にあった。家族の安否は気がかりだが、拘束されるリスクを考えると、怖くて帰国などできない。彼らの親も警察から国外にいる自分たちのことを聞かれたという。日本での住所や電話番号を聞かれた親もいた。

帰国に二の足を踏むもう一つの理由は、たとえ拘束を免れても、二度と出国できなくなるかもしれないということだ。

ヌルさんは、出国時、パスポートを取得するために警察に4万人民元(およそ65万円)を払った。そのパスポートの期限が切れたときにどうなるか、不安で仕方がない。

別のウイグル人は、「大使館に行けば、パスポートを没収されるかもしれない」と話す。聞き取りをした複数の人たちが、更新申請をしたときにパスポートを没収され、離日できなくなった人たちを知っているという。パスポートの恣意的な没収や更新不許可は、移動の自由の権利の侵害に当たる。

日本には、2千人以上のウイグル人が滞在するが、彼らは、たとえパスポートがなくても、日本に滞在し続けることはできる。しかし、故郷の家族と二度と会えなくなるおそれがあるし、家族が収容所送りになるのではないかという恐怖に苛まれ続ける。

ある女性は、家族3人が自分を訪ねて日本に来たことがあったが、現在3人は収容所に入れられていると話した。収容所にいる家族に会いたいとは思うが、自分自身も収容されかねないと苦悩する。

この女性はパスポートの期限が切れたとき、大使館職員から、更新は新疆ウイグル自治区に戻らないとできないと言われた。多くの人たちは、これは当局の罠であり、罠にかかれば収容所行きだと考えている。

女性の夫は、「帰国したら、本人の身に何が起こるかわからない。家族には会いたいが、大変なリスクを伴う。どうすればいいのか、わからない」とため息をついた。

「家族にまた会えると思うか」という質問に、話を聞いた全員が悲観的だった。

「日本に住むビザはある。ただ、期限が切れたときパスポートを更新できるのかどうか心配だ。それに帰国したらどうなるかも不安だ。どちらにしても厳しい」

ヌルさんは、父親から「帰国するな」と言われて以来、両親への連絡は最小限にしてきた。SNSで親の無事を確認するだけだ。今は、そうするしかないという。

文:パトリック・プーン アムネスティ・インターナショナル中国調査員

■ オンライン署名にご協力ください

アムネスティ・インターナショナル日本では、現在、ウイグル人やカザフ人たちの不当な拘束をやめるよう、中国政府(駐日中国大使)に要請するオンライン署名を行っています。ぜひ、ご協力をお願いいたします。

▽ 100万人のウイグル人やカザフ人たちを救って!
https://www.amnesty.or.jp/get-involved/action/uighur_20180811.html