消し去られる「ウイグル」=親から離される子供、家で監視も

jiji,  05.10.2019

 「子供が親から離される」「ラマダン(断食月)も許されない」「中国当局者が家で監視している」「スカートを切られる」-。中国新疆ウイグル自治区ではここ数年でウイグル人の信仰するイスラム教やウイグルの文化・言語もろとも消滅させる動きが加速している。同自治区で一体何が起こっているのか。在日ウイグル人の証言を基に報告する。<下へ続く>

 30代の在日ウイグル人女性は2016年に帰郷した際、街から子供が消えたことに気付いた。3人の息子を持つウイグル人の母親に聞いたら、父親が毎週月曜朝に寄宿制の学校に送り、子供たちは金曜に戻ってくる。学校ではウイグル語を使えず、中国式の教育が施される。母親は「上からの命令で(学校に)行かないと『問題がある』とされ、行かせるしかない」と顔を曇らせた。

女性は「一番小さな子は母親とまだ一緒に寝る5~6歳で、どんなストレスになっているか考えるとショックだった」と語る。100万人以上のウイグル人が「職業訓練」の名の下に「強制収容所」に入っているとされる中、両親が拘束されて「孤児」同然となった子供たち専用の収容所も存在するという。


約1カ月間、日の出から日没まで飲食が禁じられるラマダンは、イスラム教徒にとって極めて重要な宗教行事だ。しかしある在日ウイグル人は、「みんな一番怖いのは収容されること。今はラマダン時に昼も食べなければならなくなっている。かつて昼間は開いていなかったウイグルレストランも、今は経営しないと閉店させられ、収容所行きになりかねない」と証言する。女性は頭を覆うスカーフを禁止されているほか、長いスカートをはいていると当局から切られてしまう。

ウイグル人家庭などには最近、中国人当局者2人組が定期的に住み込みで派遣されている。何を話しているか、誰と会うかなど全てを調査し、上部機関に報告するのだ。例えば、当局者はギョーザを持参し「一緒に食べよう」と誘う。イスラム教徒は豚肉摂取を禁じられているが、「『これは何の肉ですか』と聞いた途端、収容所行きになる可能性がある」(在日ウイグル人)。かつて新疆の大学では漢族とウイグル族の食堂は分かれていたが、ウイグル族向けの食堂はなくなったという。

◇背景に「一帯一路」
強制収容所から解放されても厳しい監視は続く。IDカードを持たされ、駅やデパート、病院など公共の場所ではカードをタッチして入るよう強いられる。問題があれば警報音が鳴り、警備員が来て調べられる仕組みだ。また路上で呼び止められ、スマートフォンをチェックされることもしばしば。チャットの内容や保存した文章や写真をチェックされ、宗教性が強かったり政府に批判的だったりするものがあれば、拘束される。これらの監視はウイグル人だけに向けられたものだ。

複数の在日ウイグル人の証言によると、ウイグルの文化などを消そうとする急進的な抑圧政策は、漢族に比べてウイグル族の割合が高いカシュガルなど南部で最も早く14年から、区都ウルムチなどでは16~17年に拡大した。16年8月に陳全国氏が自治区トップの共産党委員会書記に就くと、強制収容の対象者は拡大した。それは新疆ウイグル自治区が、習近平国家主席の掲げるシルクロード巨大経済圏構想「一帯一路」の要衝に当たることが背景にあるとの見方が強い。

都内のIT企業に勤めるアフメット・レテプ氏は「(共産党・政府は)ウイグルの土地は欲しいが、その上で生きる人間はいらないと考えている。そのため発信力も知識も経済力もないウイグル人ばかりにし、われわれを物理的に消し去ろうとしている」と解説した。