帰国すれば拘束の危険も…中国、海外在住ウイグル人の旅券更新停止

AFP, 13.04.2020

 【AFP】サウジアラビアに留学中のウイグル人男性(30)は、目に涙を浮かべながら、とっくに期限が切れている中国の旅券(パスポート)を見せた。サウジアラビアと中国は関係を深めていることが、この男性の未来をさらに不透明にしている。

在サウジアラビア中国大使館は、2年以上前からイスラム系少数民族ウイグルのパスポートの更新を停止している。活動家らはこれを、国外に住むウイグル人を強制的に帰国させるために多くの国で中国政府が実施している圧力戦略だと指摘する。

AFPはサウジアラビア在留のウイグル人6家族のパスポートを確認したが、いくつかの有効期限は切れており、期限が迫っているのもあった。中国では100万人以上のウイグル人が強制収容所に拘束されていると考えられており、この家族らは口々に帰国するのは怖いと訴えた。

イスラム教の聖地メディナ(Medina)で宗教学を学ぶこの留学生のパスポートの期限は、2018年に切れている。「動物でさえ外国に住めばパスポートを持つことができる」と男性は話す。

「(政府は)私のパスポートを更新するか、私の国籍破棄を認めるかどちらかの対応をとるべきだ。今の状態では、私たちは価値のない人間のように思えてくる」

現在、サウジアラビアのウイグル人には、中国へ帰国する場合にだけ適用される片道の旅行証が提供されている。ウイグル人らは、拘束される危険を冒して帰国するか、サウジに不法滞在して絶えず国外追放におびえながら暮らすかという不可能に近い選択を迫られている。

ノルウェーを拠点するウイグル人言語学者アブドワリ・アユップ(Abduweli Ayup)氏は、「ウイグル人が帰国した場合、待っているのは拘束だ」とAFPに語った。

■沈黙を守るイスラム教国

ウイグル人コミュニティーをさらに不安にさせているのは、ウイグル人に対する中国の扱いに対し、パキスタンからエジプトまでイスラム教徒が大半を占める国々が沈黙を守っていることだ。これらの国々は、経済的な影響力が大きい中国と対立することを避けているのだ。

サウジアラビアは石油の最大輸出国である中国との関係を深めており、特に懸念されている。

中国の国営メディアは、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子(Crown Prince Mohammed bin Salman)の昨年の発言を引用し、サウジアラビアは「中国が対テロおよび脱過激化」の措置を講ずる権利を支持していると報じた。

さらにサウジアラビア人ジャーナリストのジャマル・カショギ(Jamal Khashoggi)氏がトルコのサウジ総領事館で殺害された事件をめぐる裁判で、同皇太子の側近が無罪になったことは国際的に批判された、中国は今年に入りこの判決への支持を表明している。

■中国帰国後、消息不明に

サウジアラビアに在留するウイグル人はわずか数百人と推定されている。主に神学校の学生、貿易業者、亡命希望者などで、その多くは中国で拘束されている家族とのつながりが絶たれている。

サウジアラビアに住むあるウイグル人実業家は、不法滞在となった同胞ウイグル人の期限切れのパスポート8冊のコピーをAFPに示しながら、彼らの多くが中国のスパイだと疑われることを恐れており、隠れて暮らすことを余儀なくされている人もいると語った。

また、サウジアラビアに留学中のウイグル人学生はAFPに、友人3人が2016年後半に強制送還され、中国到着後に「消息不明」となったと語った。友人らは中国政府が対過激派対策だと主張するいわゆる「再教育施設」にいる可能性が高いという。

アユップ氏はAFPに、2017年以降サウジアラビアで5件の強制送還を確認していると語ったが、5件以上あるとするウイグル人活動家もいる。エジプトやタイでも同様に、ウイグル人の強制送還が報告されている。

強制送還が、中国からの圧力を受けサウジアラビア政府が実施したものか、同国独自の不法滞在者の取り締まりによるものかは定かではない。サウジアラビア当局はコメントの要請に応じていない。

在サウジアラビア中国大使館は「サウジアラビア当局と協力してウイグル人を強制送還」してはいないとAFPに語った。パスポート更新の拒否について尋ねると同大使館は、ウイグル人の「兄弟姉妹」のための領事業務は停止していないとのみ答えた。

■「どうすることもできない」

ウイグル人学生のグループは昨年、西部ジッダ(Jeddah)の中国領事館に書簡を送った。この中で学生らは、中国領事館はサウジアラビア在留の漢民族のパスポートは更新しているのに、なぜウイグル人の申請は無視するのかと問い、「私たちは同じ国の出身ではないか」と訴えた。

「私たちは2年間も中国の父、母、きょうだいたちと連絡が取れていない…私たちがサウジアラビアで学んでいるために、彼らは拘束されたと聞いている」

あるウイグル人の若い女性は青色をしている片道の旅行証を引き合いに出しながらこう語った。「妊娠して子どもを産みたいとは思わない──赤ん坊には青色の書類と暗い未来が待っているだけだ」「私たちにはどうすることもできない」 【翻訳編集】AFPBB