ジェノサイドで結ばれる中国とミャンマーの血塗られた同盟

Newsweekjapan, 04.02.2020

<ウイグル、ロヒンギャ──少数民族弾圧に注がれる世界からの厳しい視線が、両国を近づける>

中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は1月17日から2日間のミャンマー訪問を通じて、アウンサンスーチー国家顧問兼外相と「相思相愛」の関係を構築した。両国は共同声明で、巨大経済圏構想「一帯一路」への協力強化を宣言するなど、多くの「互恵関係」に即した「共同事業」の具体化に着手するとアピールした。

世界最大の独裁国家の指導者である習がノーベル平和賞受賞者のスーチーと握手したのは、何も国内外の問題を穏便な手法で解決しようとしているからではない。2人がトップを務める2つの国家に世界から厳しい視線が注がれていることが、相互に接近を促したのだ。

まず、スーチーのミャンマーはイスラム系少数民族ロヒンギャを弾圧し、無数の難民を隣国バングラデシュに流入させたことで、国際的な非難を浴びている。ロヒンギャ弾圧は国連が定めた「ジェノサイド条約」に違反するとして提訴され、国際司法裁判所における審理も進んでいる。スーチーは自ら審理に出廷してミャンマーのイメージを挽回しようとしたが、「ノーベル平和賞に泥を塗った人物」が語る強弁に説得力はなかった。

「元紅衛兵」への軍部の警戒感

それでも、中国政府は一貫してミャンマー政府の大量虐殺を擁護してきた。スーチーがかつてミャンマー軍政の後ろ盾である中国政府を批判していた事実を忘れたのではなく、中国当局も明白に「ジェノサイド条約」に反する政策をウイグル人に対して断行しているからだ。

ミャンマー政府に有罪判決が下されれば、次は自分たちだと習は危機感を抱いているはずだ。そのような「呉越同舟」の危機感の共有が、2人を今まで以上に近づけたにすぎない。

今回のミャンマー訪問の成果を見てみよう。「最優先事項」は中国雲南省とミャンマー西部を結ぶ鉄道や高速道路網の整備だとされている。こうした交通網の建設で、中国政府はインド洋に通じる「中国・ミャンマー経済回廊」を掌握できる。かつて第二次大戦中に日本軍と連合国が死闘を繰り返し、日本軍が多数の死傷者を出した「インパール作戦」で大きな役割を果たした戦略ルートと重なり、これを復活させたいとの野心が中国にはある。

しかし、ミャンマーの実権を握る軍部には北方の巨大な隣人を警戒する雰囲気も残る。政府と少数民族武装勢力との間で自治権をめぐる紛争は今も続いているし、反政府武装勢力の多くは中国と特別な関係を持っている。中国系の少数民族は国境を挟んで雲南省側に同胞がおり、政府軍との戦いで不利になると、中国側に避難する。

一部の武装勢力の指導者は文化大革命期に越境し、「世界革命の実現」を目指した元紅衛兵だ。彼らは戦闘に疲れると雲南省に入って療養し、中国政府の指令と援助を受ける。習自身が元紅衛兵であり、ミャンマーの密林で「革命戦争」を続けてきた反政府武装勢力にシンパシーを抱き、内政干渉の駒として使っているとみていい。当然、ミャンマー軍は反政府武装勢力の背後にいる習に全幅の信頼を置けない。

それでも経済的な結び付きは強化されている。日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、2018年度の中国からミャンマーへの直接投資は5億5800万ドルに達し、制裁を受けているスーチーにとっては、まさに救いの手である。今回の習の訪問でも、最大都市ヤンゴンの開発など33項目の援助が決定されたとの報道がある。

ミャンマーと中国の間で結ばれた「友情」は、ジェノサイド犠牲者たちの鮮血によって真っ赤に染まっている。