イスラム教徒に豚とアルコールを強要する中国・ウイグル「絶望」収容所

Newsweek, 21.05.2018

<中国政府がイスラム教徒の弾圧をエスカレートさせるなか、強制収容所の元収容者がその悲惨な実態を語った>

中国でイスラム教徒の「思想改造」のための強制収容所に入れられた元収容者らが、当局にイスラム教が禁じるアルコールや豚肉の摂取を強要された、と語った。少数民族を抑えこんで服従させる、中国政府の取り締まりの一環だ。

中国に住む推定100万人ものイスラム教徒がこうした収容所に収監されてきた。最も多いのは、中国政府による漢化政策に断固として抵抗してきた中国西部・新疆ウイグル自治区の出身者だ。元収容者らが米紙ワシントン・ポストの取材に応じ、思想改造のためなら手段を選ばぬ中国政府の手口を語った。

収容者は、中国共産党と習近平国家主席の信奉者にするための洗脳、屈辱、拷問を受けた。弁護士が付かず、正式な逮捕容疑もなく、救いもない。

元収容者のカイラト・サマルカンドは、ワシントン・ポストに対し、カザフスタンから帰国後に拘束され、3カ月にわたって収監された、と語った。収監中、中国政府のプロパガンダを何時間も勉強させられ、習を称賛するよう強要されたという。「規則に違反したり、義務の履行を拒否したり、他者と衝突したり、勉強会に遅刻したりした収容者は、最長12時間、手錠と足錠をかけられた」、と彼は当時の様子を語った。

文革以来の苛烈さ

別の元収容者も、サマルカンドの主張に同調した。オミル・ベカリは、カザフスタンにある自宅から中国の家族を訪ねる途中で、中国当局に逮捕された。収監中、当局に過激派と疑われた者はイスラムの教義に反するアルコールの摂取を強制されていたという。他の収容者も罰則には無理やり豚肉を食べさせられた、と2人は証言した。豚も禁じられた動物だ。

2人とも解放され、現在はカザフスタンで暮らしている。だがいまだに、収容所で起きたことの悪夢に苛まれているという。「毎晩、当時のことを思い出す」と、ベカリはAP通信に語った。「朝まで眠れない。四六時中、記憶が頭から離れない」。釈放後、ベカリの両親と姉は収容所に送られた。

米シンクタンク、ジェームズタウン基金会が5月15日に公表した報告書のなかで、ドイツ南部コーンタールの「ヨーロピアン・スクール・オブ・カルチャー・アンド・セオロジー」のアドリアン・ゼンス教授は、中国政府によるイスラム教徒弾圧についてこう指摘した。「(1966~1977年の)文化大革命以降、中国政府が主導したなかでおそらく最も苛烈な社会改造だ」

中国政府は収容所の存在自体を否定するが、ゼンスは新疆に住む1100万人のイスラム教徒の相当数が当局に拘束されたとみており、その規模は数十万人から100万人超に上ると推計している。

ゼンスは、中国政府が2017年3月から拘束者数を急増させたと言い、収容所の建設に向けた73件の政府プロジェクトに1億ドル以上が投じられた証拠も提示した。陳全国・前チベット自治区党委員会書記は、2016年8月に新疆ウイグル自治区トップに就任した後、チベット自治区とよく似た「漢化政策」の陣頭指揮をとった。

中国政府がターゲットにしているのは、新疆のイスラム過激派だ。彼らは国家安全保障上の脅威で、中国各地の都市でテロ攻撃を繰り返しているからだという。その標的が、新疆ではイスラム教徒で多数派のウイグル族だ。「中国政府が言う『テロとの戦い』は、宗教や言語、民族的アイデンティティを封じ込める戦いへ変貌している」、とゼンスは報告書で述べた。

宗教に警戒

イスラム教徒だというだけで、当局は疑いの目を向ける。顔全体を覆うベールを着用したり、男性が長いひげを伸ばしたり、子どもにムスリム特有の名前を付けたりするのを禁止することで、中国政府はイスラム教徒のアイデンティティを踏み潰しにかかった。

彼らに共産主義思想を吹き込み、逆に分離独立主義を抑え込む目的で、新疆の住民世帯にわざわざ政府職員を派遣することもある。

習が「外国的」とみなすイスラム教やキリスト教のような宗教は、習政権が漢化と「社会主義的な革新的価値観」の体現を目指すなかで一層の圧力にさらされている。しかも新疆は、中国政府が数十億ドルの資金を投じる「一路一帯」構想の重要拠点とされているため、弾圧は容易に止みそうにない。

新疆は中国政府が保有する最先端の監視技術の実験場にもなっている、とゼンスは指摘した。そこで得た成果は、中国全土における「社会改造」に応用される可能性がある。