第3部 全人代を前に/上(その1) ウイグル監視社会 当局、分離派テロ警戒

Mainichi, 04.03.2018

古代シルクロードの要衝として知られる中国新疆ウイグル自治区カシュガル。習近平国家主席が2013年から提唱する経済圏構想「一帯一路」の西の玄関として整備が進む。2月末、春節(旧正月)連休明けの繁華街は人口の9割を占める少数民族のウイグル族らでごった返していた。

 その一角、自動小銃で武装した3人組の治安当局者が雑踏に目を光らせる。突然、30歳前後の男性を呼び止めた。有無を言わさず男性にスマートフォンを出させると、トランシーバーに似た手のひら大の黒い機械にケーブルで連結した。

 「スマホの中のデータが丸見えになり、『聖戦』など違法とされる言葉があれば拘束される」。イスラム教徒のウイグル族男性が声を潜めて打ち明けた。スマホ内にはインターネット上の会話記録から銀行口座の暗証番号まで、あらゆる個人情報が入っている。データが吸い取られ、丸裸にされると恐れているのだ。

 外国人も例外ではない。記者がウイグル族の集落に入った10分後、約10人の治安当局者に囲まれた。一人が「何か撮っていましたね」と告げ、黒い機器に記者のスマホをつなごうとした。記者が「何の法律を根拠にスマホの中を見ようとするのか」と抗議すると、機器をつなぐのをやめた。当局者の自然な動作に背筋が寒くなった。

 同自治区では警察などへの襲撃事件が続いてきた。中国当局は分離独立を求めるウイグル族らの「テロ事件」を警戒する。容疑者を一瞬で見つけ出す人工知能(AI)による顔認証システムなど全国に先駆けたハイテクでの監視が導入されている。自治区出身で米国在住のウイグル族男性は「当局のやり方は巧妙化している。監視ノウハウはいずれ国内に拡大されるはずだ」と話した。 (次回から国際面に掲載)