これが監視社会だ。最新技術で常に見張られる人々たち

BuzzFeedJapan, 21.01.2018

中国は、活況を呈する大都市の北京から遠く離れた場所に、ディストピア的な最新技術と、人間による警備を融合させた巨大な監視システムを築きつつある。まさに「監視技術を研究するための最前線ラボ」だ。

中国西部の新疆ウイグル自治区にあるカシュガル市。ここでは、ヒゲを生やすと警察に通報される可能性がある。結婚式に人を呼びすぎても、あるいは、子どもを「ムハンマド」や「メディナ」と名づけても、そうなる可能性がある。

近くの町までクルマやバスで行くと、そこには検問所が待ちかまえている。武装警官が、通行者の携帯電話に「Facebook」や「Twitter」などの禁止されているアプリが入っていないか調べたり、テキストメッセージをスクロールして、何らかの宗教的な言葉が使われていないか調べたりすることもある。

もしあなたがここの住民なら、国外にいる家族や友人に電話をかけるのにも神経をすり減らすだろう。数時間後、警察が家に押しかけてきて、盗聴されていたとしか思えないような質問を浴びせてくるかもしれないからだ。

北京から飛行機で4時間。中国の西端にあるこの土地で暮らす何百万人もの住民にとっては、このディストピア的な未来がすでに現実のものとなっている。すでに中国は国内全土で、世界でもっとも高度なインターネット検閲システムを配備しているが、現在は新疆ウイグル自治区に精密な監視国家を築きつつある。最新技術と人間による警備を駆使して、市民の日常生活のあらゆる側面を監視する国家だ。同自治区には、ウイグル族と呼ばれるイスラム系少数民族が暮らしている。中国政府は彼らウイグル族を、独立運動グループを結成してテロリズムをあおっているとして非難してきた。2017年春から、何千人というウイグル族や他の少数民族がいわゆる「政治教育センター」に送られ、姿を消してきた。拘束者の身内によれば、欧米製のソーシャルメディアアプリの使用や、イスラム諸国への留学などが、その理由のようだという。

筆者は過去2カ月間にわたって、20人以上におよぶウイグル族の人々に取材し、同地での生活について話を聞いてきた。そのなかには、亡命したばかりの人も、いまも新疆で暮らしている人もいた。その大多数は匿名を希望した。もし名前が公表されれば、家族が拘束・逮捕されることを恐れていたのだ。

彼らの語ったことを、政府や企業による公的な記録と合わせてみると、ある政治体制の全容が浮かび上がってくる。毛沢東時代のパラノイアを思い起こさせる一方で、規範外の行為に対する高圧的な警備と、虹彩認識や携帯電話を盗聴するアプリなどのハイテクツールを融合させる、完全に現代化された政治体制の姿だ。

中国政府は、新疆にはウイグル族過激派による暴力という脅威が潜んでいるため、安全対策が必要だと述べている。現地では騒乱が定期的に起こってきた。2009年の暴動では約200人が死亡した。2013~14年には、ナイフや爆弾を用いた攻撃が相次いで起こり、こちらも死者を出した。中国政府は、新疆の経済発展に注入してきた資金や、ウイグル族の大学進学や官庁への就職を容易にするプログラムについて言及し、中国政府のおかげでウイグル族の生活は改善されてきたと主張している。新疆の公安および宣伝活動当局にコメントを求めたが、回答はなかった。一方、中国外交部は、地方政府が整備した監視体制については関知しないと言っている。

中国外交部の陸慷(ル・カン)報道局長に、監視体制が必要な理由を尋ねると、「新疆の人々が幸せと平和に満ちた労働・生活環境を楽しんでいる点を強調したい」と語った。「地方当局による監視体制については聞いたことがありません」

しかし、アナリストや人権団体は、ひと握りの人々が起こしている行動のために、新疆で暮らす900万人のウイグル族全員が厳格な規制によって苦しめられていると指摘している。ウイグル族は、新疆の人口のおよそ半分を占めている。こうした抑圧が怒りの火に油を注ぎ、過激主義を引き起こす原因になっている、と彼らは言う。

今回取材した人々の話では、新疆のいたるところで見られる政府監視の目は、日常生活の非常にありふれた側面にも影響を及ぼしているという。トルコで暮らす、洗練された若いウイグル女性のDさんは、新疆の小さな村で暮らしている祖母と連絡をとることさえできなくなってしまったと語る。

Dさんが祖母に電話すると決まって、数時間後に警察が祖母の家に押しかけてきて、彼らの目の前でDさんに電話をかけ直すように要求するのだという。

勤務先のオフィス近くにあるカフェで私の対面に座ったDさんは、「85歳の祖母と私が、中国を破壊する方法について話し合うはずがないじゃないですか!」と、怒りを爆発させた。

Dさんは婚約後、新疆に住んでいる親戚を結婚式に招待したという。ウイグル族がパスポートを取得することはほぼ不可能になっていたので、事態が好転することを期待して、Dさんは結婚式を数カ月延期することにした。

5月、ついにDさんと彼女の母は、中国でポピュラーなメッセージングプラットフォーム「WeChat」で親族とビデオ通話をした。Dさんが現地のようすを尋ねると、彼らは何も問題はないと答えた。すると、警察による盗聴を恐れた彼らのなかのひとりが、手書きのサインボードを掲げた。そこには「パスポートは取れなかった」と書かれていた。

Dさんは意気消沈したが、ただうなずいて会話をつづけた。通話が終わるや、彼女は急に泣き出したという。

「誤解しないでください。私は、自爆テロ犯や、善良な市民を襲う犯罪者を支持しているわけではありません」とDさんは語った。「でも、そのとき私は母に、彼らの気持ちがわかると言いました。激しい怒りに駆られていたため、彼らの心情が理解できたんです」

中国政府は、新疆を監視するための最新鋭技術に何十億という人民元を投じてきた。ガソリンスタンドに設置された顔認証カメラや、国境を巡視するドローンといった技術だ。

これは、中国に限った話ではない。アメリカからイギリスまで各国の政府は、テロリストの脅威に立ち向かうために、セキュリティー技術やノウハウに資金を投入してきた。だが、共産党に支配された法廷が被告人の99.9パーセントに有罪判決を下し、恣意的拘束も当たり前のように行われる中国では、新疆の全住民に対するデジタルおよびフィジカルなスパイ行為が、ウイグル族や他の少数民族に悲惨な結果をもたらしてきた。より多くの権利を求めて声をあげ、ウイグル族の文化や歴史(高名な学者のイリハム・トフティなど)を称賛した大勢の人々が投獄されてきたのだ。

中国は10年ほど前から、騒乱や激しい抗議行動に呼応するように、新疆に対する規制を徐々に強めてきた。だが、その監視が劇的なまでに強化されたのは、新疆ウイグル自治区の党委員会書記に陳全国(チェン・チュエングオ)が任命された2016年8月からだ。陳書記は、新疆に「グリッド型ソーシャルマネジメント」を導入。数百フィート(60~90メートル)ごとに警察・準軍事組織を配置し、何千という「コンビニエンス警察署」を設置した。「政治教育センター」の使用も、陳書記の任期が始まってから大幅に増加しており、2017年に入って何千人もが、何の罪状もなくそこで身柄を拘束されている。ドイツにあるヨーロピアン・スクール・オブ・カルチャー・アンド・セオロジーの研究者、エイドリアン・ゼンツによると、中国の予算総額を分析した結果、2017年前半における新疆の治安維持への出費は、前年同期と比べて45%上昇しているという。その資金の一部は、何万人という警官を町中に派遣して行う巡回に注ぎ込まれた。

中国共産党中央政法委員会書記(当時:2017年10月に引退)の孟建柱(モン・ジェンヂュー)は8月に行った演説で、DNAデータベースや「ビッグデータ」を活用して新疆の治安を維持するように呼びかけた。

中国の新疆には、監視技術が駆使される未来社会の姿が垣間見える。少数民族を監視(そして弾圧)する資金と政治的意思の両方を持つ中国のような政府が、監視技術を行使するディストピア的な未来だ。新疆の現状は今後、中国の他の地域で本格展開される過酷な監視体制の前触れかもしれない、とアナリストたちは言う。

「開放型の刑務所です」と語るのは、ワシントンを拠点とする人権擁護団体「ウイグル人権プロジェクト」(UHRP)のディレクターを務めるオマー・カナートだ。UHRPは、新疆で暮らすウイグル族の生活状況を調査している。「文化大革命が、新疆に再び押し寄せてきたのです。政府はそのことを隠そうともしていません。すべてが公になっているのです」

かつてはシルクロードのオアシス都市であったカシュガル市は、ウイグル族コミュニティーの文化的中心地だ。同市北部にある静かな並木通りには、ヌードルショップやパン屋に混じって、堂々とした構えの収容所が建っている。その収容所は、コンクリートの高い塀に囲まれ、その塀の上には有刺鉄線が張り巡らされている。塀には、「自分の目を大切にするように、民族の結束を大切にしよう」「共産党を愛そう、中国を愛そう」といったスローガンが書かれた色とりどりのポスターが貼られている。

門の外に掲げられた看板によると、その収容所は「カシュガル職業技能教育訓練センター」という名前だ。9月、私が携帯電話でその看板の写真を撮っていると、門のそばの交番から警官が飛び出してきて、写真を削除するように要求してきた。

「このなかではどんなことが教えられているんですか?」と私は尋ねてみた。

「さあ、よくわからんね。とにかく写真を消すんだ」と彼は答えた。

去年まで、この収容所は学校だったが、いまそこは政治教育センターになっており、ウイグル族が収容されている(友人や身内が収容されているという3人から話を聞くことができた)。新たに何百と建設されたそうした施設では、収容されたウイグル族が、中国語のほか、イスラム教や政治活動に関する中国の法律、そして、中国政府が国民に利益をもたらしているあらゆる点などについて学習している。収容期間が何カ月にも及ぶことも珍しくないという。

「みんな、ここのなかに姿を消してしまうんです」と、その地区で商売を営むある人は語った。「何人もの人たちが。私の友人の多くも」

以来、彼らの声を聞いていないし、家族でさえも彼らと連絡がとれないのだという。2017年春以降、何千人というウイグル族や他の少数民族が、収容所に送られてきた。こうしたセンターは新しいものではないが、新疆ではここ何カ月かで、その目的は著しく拡大されてきた。

門の隙間からは、社会主義リアリズム様式の白い彫像で飾られた庭や、スローガンが書かれた赤い横断幕、そして、また別の交番が見えた。なかにあるベージュの建物は、どの窓にもブラインドが下ろされていた。

カシュガル市にある政治教育センターの塀に貼られた宣伝ポスター。「自分の目を大切にするように、民族の結束を大切にしよう」と書かれている。

中国の国営メディアも、こうしたセンターの存在を認めているが、多くの場合は、それらがウイグル族の住民にもたらす利益を誇らしげに伝えている。国営の『新疆日報』が行ったインタビューのなかで、34歳になるウイグル族の農業者(記事では「模範生」と紹介されている)は、政治教育を受けるまで、自分の行動や服装が「宗教にもとづく過激主義」ととらえられかねないものであることに気づかなかったと述べている。

この種の政治教育を受けさせるための拘束は、中国では刑罰とは見なされていない。そのため、そこに送られる本人や家族に、正式な罪状や刑期が知らされることはない。だから、どんな罪を犯せばセンターに送られるのかは、はっきりとはわからないのだ。事例報告によれば、有罪判決を受けたことのある身内がいる、携帯電話に不適切なコンテンツが入っている、宗教心が強すぎると思われる、といった場合はどれも、センター送りの原因になりうるようだ。

はっきりしているのは、イスラム教国家を訪れたことがあったり、外国に行ったことがある身内がいたりすると、拘束のリスクがあるということだ。また、取材したウイグル族の人によれば、いたるところで目を光らせるデジタル監視のせいで、国外にいる身内と連絡をとることはほぼ不可能だという。

少し前に亡命を果たしたある人は、幼い娘といっしょに新疆に残っている妻から離婚を求められたと語る。そうしない限り、警察から彼の行動をしつこく聞かれるからだ。

トルコの首都アンカラで暮らす別のウイグル亡命者は、「危険すぎて、家に電話なんてできません」と語る。「以前は、クラスメイトや親戚にも電話していました」。ところがその後、警察が彼らの家に押しかけてきた。次に電話すると、「もうかけてこないで」と言われたという。

ウイグル族のRさんは、大学の学部を卒業したばかりの学生だ。彼は大学で、自分にロシア語の才能があることに気づいたという。彼は留学したくてたまらなかった。だが、2016年に課された新たな法律のせいで、ウイグル族がパスポートを取得することはほぼ不可能になってしまった。そこで家族は、およそ1万人民元(1500ドル)をかき集め、それを役人の袖の下に入れて、彼のためにパスポートを手に入れてくれたという。

Rさんは、トルコに渡ってトルコ語を勉強し始め、異国の文化にどっぷりと浸った。その都市の文化には、ウイグルの慣習や伝統との共通点が数多くあった。彼は、ふるさとの家族や、家族が新疆南部で営む綿花農園が恋しかったが、なるべく家には電話しないようにした。家族に迷惑をかけないようにするためだ。

「田舎では、外国から電話がかかってきただけでバレてしまうんです。筒抜けなんです」とRさんは語った。信頼できるレストランの奥の席で私と会ってくれたRさんだったが、夜、ほかの常連客が全員いなくなってから、と条件がつけられた。話しながら彼はひどく緊張していて、注文した仔羊の肉詰めパイにも手をつけなかった。

3月、Rさんは私に、彼の母が政治教育センターに姿を消してしまったと教えてくれた。家族の誰も、彼女に連絡がとれない状態になり、綿花農園は彼の父がひとりで営んでいた。Rさんは絶望感に打ちひしがれていた。

2カ月後、ようやく彼は母の声を聞いた。電話口の向こうで彼女は、中国共産党に感謝している、政府がやることに満足していると早口で言った。

「母が本心からそんなことを言うはずありません。そんなことを言う人ではありません」とRさんは語った。「警官が母の横で立っているみたいな感じでした」

それを最後に、両親との電話は止まってしまった。Rさんは2人の声を5月から聞いていない。

新疆の監視体制が厳格化されたのに伴い、セキュリティーは、何百もの企業(大半は中国の企業)にとって大きなビジネスになっている。

中国政府が監視のための予算に資金を注ぎ込んでいることは、さまざまな研究からわかっている。ヨーロピアン・スクール・オブ・カルチャー・アンド・セオロジーのゼンツは、新疆政府がセキュリティーのための要員とシステムに金を費やす様子を注意深く見守ってきた。ゼンツによれば、国が後押しする監視ブームを反映して新疆のセキュリティー産業が成長しており、新疆政府による情報技術移転やコンピューターサービス、ソフトウェアへの投資は今年、2013年と比べて5倍になる見込みだという。

ゼンツは、「共有情報プラットフォーム」構築の項目が今年初めて予算案に現れたことに注目した。また新疆政府は、今年これまでに、さらに何万人ものセキュリティー要員を雇っているという。

カシュガル市のあらゆる通りには、武装警察や準軍事組織、ボランティアの自警団が立っている。彼らは、通行人を止めて身分証明書を確認する。携帯電話を調べて、「WhatsApp」などの禁止されているアプリや、VPN(バーチャル・プライベート・ネットワーク)、宗教的あるいは政治的な内容を含んだメッセージが入っていないか、調べることもある。

高解像度カメラや顔認証技術などの監視機器も、いたるところにある。一部の地域のウイグル族は、携帯電話に、メッセージをモニターできるアプリをダウンロードさせられてきた。報道によると、そのアプリ「浄网衛士」(浄网は「ウェブ洗浄」の意)は、「違法とされる宗教的な」内容や「有害な情報」をモニターするという。

新疆では、インターネットがひどく遅い。国際人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)」の中国担当リサーチャーである王松蓮(マヤ・ワン)も、ウイグル族や反体制派、移民を対象としたDNAデータベースの使用や、音声パターン認識の使用などについて記録してきた人物だ。

カシュガル市から数マイル東にある検問所に入っていったときのことだった。入口のそばに立っていた警官が、通勤者たちの携帯電話を調べ、禁止されているアプリやメッセージが含まれていないかをチェックいていた(外国人の私は別の列に並ばされ、携帯電話の提示は求められなかった)。その後、彼らは顔を顔認識カメラでスキャンされ、IDカードとの照合が行われた。部屋の反対側には、光沢のある白色の全身スキャン用の機械が置かれていた。

ガソリンスタンドにも同じような設備が置かれている。9月に訪れたカシュガル市のガソリンスタンドでは、訪れた人たちは給油の前にクルマから出て、顔をスキャンされ、IDカードとの照合を受けていた。外国人の私は、パスポートの提示を求められただけだった。

中国の法執行機関向けに監視用ドローンなどのセキュリティー機器を製造しているある企業のオーナーは、「新疆は情勢が不安定なため、現地の政府当局から、我が社の製品を数多く買っていただいています」と語った(同社は北京を拠点としている)。同氏によれば、新疆では西側の国境近くでドローンが使用されているという。

中国政府は、虹彩認識システムを製造する北京万里紅科技股份有限公司(Beijing Wanlihong Technology Company)などとも契約している。カシュガル市内で行われているパイロットプロジェクトに携わっており、機器や訓練の提供などを行っている同社によると、虹彩認識システムは、顔や指紋のスキャン技術よりも高い精度を誇っているという。

北京万里紅科技のウェブサイトには、こう書かれている。「当社のシステムは、強力で大規模な身元確認システムの構築を目指しています。重要容疑者の身元を割り出し、緊急対応メカニズムをタイムリーに発動させるためです」

同ウェブサイトによれば、収集されたデータは、路上で不審な動きをしている人物の監視に使用されることもあるという。あるいは、携帯電話会社から入手したその人物のSMSやインターネット閲覧に関するデータと併用されることもあるようだ。

新疆ウイグル自治区ウルムチ市を拠点とする立昂技術股份有限公司(Leon Technology)は、新疆をはじめとする中国各地の電気通信会社や政府機関に、人工知能(AI)を組み込んだセキュリティーサービスを提供している。同社は、2017年第1四半期に260%の増益を記録した。

立昂技術はウェブサイトに投稿された記事のなかで、「新疆政府は、大金を投じて市民の財産と生活の安全を守り、地域の平和と発展、安定を維持しなければなりません」と述べている。

新疆のセキュリティー請負業者について調査している豪ラ・トローブ大学のジェームズ・レイボールド准教授は、拡大するセキュリティー産業(警備と監視の両方を含む)は、いまや同地域の住民にとって最大の雇用者になっていると述べる。

「上海のマーケターたちはこれを、『新疆におけるセキュリティー投資の黄金時代』と呼んでいます」と彼は語る。

ハイテク機器が導入されてはいるものの、政府が実際にはどれくらい効果的に、大量の映像・音声記録を分析しているのかについてははっきりしていない、とレイボールド准教授は言う。だが、中国政府が、電話の盗聴や監視カメラなどのソースから集めた情報を結合させて、国民の詳細なプロフィールを構築すべく、リソースを投入していることは確実だ。

毛沢東時代の改革運動だった文化大革命は、共産党の敵と目される人物を罰するために隣人同士を争わせる暴力的なキャンペーンなどで、いまも人々の記憶に残っている。前述のゼンツは新疆での現状について、「ソーシャルに介入する側面や宗教行為に対する規制などは、ある意味で、ハイテク版の文化大革命のようにも見えます」と語る。「しかし、この比較は成り立ちません。というのも、体系的かつ計画的に、目立たないようにというのが、いまのやり方だからです。一方、文化大革命は大混乱を招きました」

「これは、完全にトップダウン型の支配です」と彼は付け加えた。

ゼンツによれば、国営企業各社は新疆を、ビッグデータの試験場として利用している。新疆はこれまでも、中国の他の地域で本格展開される前に監視技術を試行する場として利用されてきた歴史があるという。実際に多くの企業が、この目的のために、政府の援助を受けて研究開発ラボを新疆に開設してきた。

「新疆は、監視技術を研究するための一種の最前線ラボなのです」とゼンツは語る。「人目につきにくいため、より多くの実験を行えるのです」

新疆の監視体制が特に厳しいのは確かだが、政府が監視技術の使用を中国の他の地域にも拡大しつつあることは明らかだ。メディア報道によると、中国の法執行機関は新疆以外でも、犯罪者をつかまえるために顔認識技術をますます用いるようになっている。8月に山東省の港湾都市、青島市で開催されたビール祭りでは49人が逮捕された。監視カメラがとらえた彼らの顔と国家警察のデータベースが一致し、彼らが窃盗や薬物使用などの容疑者であることがわかったのだ。

「彼ら指名手配犯は気をゆるめていました。ビール祭りでは身分証明書のチェックが行われていなかったのです」と、ある地元警察官はオンラインニュースサイト「Sixth Tone」に語った。「顔らの顔をとらえた、たった一枚の写真が逮捕につながることを彼らは知りませんでした」

ビッグデータへの進出を示すもうひとつの例として、中国政府は「社会信用系統(ソーシャルクレジットシステム)」の構築にも取り組んでいる。このシステムは、愛国心や道徳的な行動をはじめとする、さまざまな評価をまとめて数値化したスコアを国民ひとりひとりに与えるものだ。

しかし、多くの人々の話では、デジタル監視だけでなく、政府は住民のあらゆる行動を追跡する専門要員を多数、新疆に送り込んできているという。

この件については、2017年夏まで新疆の中心地、ウルムチ市にあるアパートで妻と娘たちといっしょに暮らしていたライターのTさんに話を聞くことができた(一家は現在、アメリカにいる。Tさんは、政府による身元の特定を恐れて、一家が市内のどこに住んでいたのかは公表しないよう求めてきた)。Tさんの居住区を管轄していた共産党委員会の役人は、それまで何年ものあいだ、毎週彼の家にやって来て、ありきたりなことを一通り聞いてきた。「誰が尋ねてきたか?」「誰か妊娠しているか?」「転職した人はいるか?」といったような質問だ。Tさんの話では、その後、役人はその情報を地元の警察に伝えていたという。

ところが、4月に入ると質問内容が変わった。その役人は、一家はイスラム教徒なのか、イスラムの教えをどのように実践しているのか、などと聞いてくるようになったのだ。Tさんは信心深いタイプではなかったが、イスラム教はウイグル文化の一部であり、彼はそれを大切にしていたという。家の本棚には小さな聖句集が置かれ、床の上には礼拝用の絨毯が4枚敷かれていた。その役人の質問はTさんを緊張させた。そして彼は、自分は信者ではないと答えた。

友人たちの失踪が始まったのは、それから1カ月後のことだった。友人たちが深夜、政治教育センターへと警察に連れ去られ、姿を消してしまうようになったのだ。隣人たちが次々に消え始め、Tさんは恐怖を感じた。

彼は毎晩、オーバーコートと冬物の厚手のズボンをドアのそばに用意した。警察がつかまえに来ても、すぐ身につけられるようにするためだ。暖かい季節だったが、冬まで拘束されることもありうると彼は心配していたのだ。彼は礼拝用の絨毯を手放し、自宅内の比較的安全な場所で宗教の本をすべて燃やした。

「妻はひどく取り乱していました。そして『そんなことしちゃダメ』と私に言いました」と彼は語った。「私は『ほかにどうすればいいんだ。公共のゴミ箱のなかから見つかったら、私たちは大変なことになるんだぞ』と言い返しました」

Tさん一家が暮らすアパートから最初に姿を消したのは、外国に行って戻ってきた人たちだった。特に、マレーシアやエジプトなどのイスラム諸国に行ったことのある人たちだ。そして6月、街角やバス停、ガソリンスタンドなどで警察が、通行人の携帯電話をランダムに調べるようになった。携帯電話のコンテンツを、ハンドヘルド端末にダウンロードすることもあったという。

携帯電話に「WhatsApp」や「Facebook」などの禁止されているアプリが入っている場合には、警察はその所有者に警告を与える。また警察は、一部の人の家や職場にやって来て、禁止されているソフトやコンテンツが入っていないか、パソコンを調べることもあるという。

「もし何か見つかったら、ただでは済みません」とTさんは語った。「新時代の警察でした。まさにインターネット警察です」

アブドゥウェリ・アユプは、釈放された後も、検問所を通るたびに不安を感じてきた。現在43歳の読書家の同氏は、以前に壊滅的な打撃を与えられたからだ。同氏は、子どもたちにウイグル語を教える幼稚園や学校の設立に尽力していたが、違法資金調達の容疑で起訴され、実刑判決を言い渡されて、2013年に刑務所に入れられたのだ。

1年3カ月後、アブドゥウェリは妻と2人の娘のもとに帰った。釈放後、彼はすべてが元通りになってくれることを願っていた。だが、2015年7月のある日、トラブルがアブドゥウェリを再び襲った。通勤途中の彼が、何度も通過してきたはずの検問所に立ち寄ったときのことだった。

いつも手を振って彼を通してくれていた検問官が、中国版SWATである「特警」の警官に代わっていたのだ。身分証明書を見た彼らは、アブドゥウェリに投獄歴があることに気づいた。

彼らがラップトップを見せるようアブドゥウェリに言ったのはそのときだった。

「『ここの検問官たちは私のことを知ってくれています。私はここに毎日来ているんです』と私は言いました」とアブドゥウェリは語る。しかし警官のひとりが、彼の顔にビンタを食らわせたという。ラップトップを開いた彼らは、アブドゥウェリが何年か前、米国カンザス州でのフェローシップ期間中に書いたレポートを発見した。それらのなかでアブドゥウェリは、ウイグル文化や統治システムとしての独裁政権など、タブーとされるテーマについての私見を表明していた。

アブドゥウェリはすぐに6人の警官に拘束され、丸裸にされて所持品を調べられ、レポートについて何時間も尋問されたという。

警官のひとりが、もしまたこんなレポートがラップトップから見つかったら、刑務所に送り返されることになると彼に言った。

9月、トルコのアンカラにある友人のアパートで、そのときのことをくわしく話してくれたアブドゥウェリは、「ここには法など存在しないと確信したのは、そのときでした」と語った。その年、彼はアンカラに逃げた。「もしまたパソコンを取り上げられたら、そのときは危険だとわかっていました。だったら出ていくしかないと」

中国政府は、新疆における彼らの目標は、民族の結束と社会の安定の両方を達成することだと繰り返し言ってきた。同政府はウイグル族を抑圧するだけでなく、一部の労働者に補助金を出し、学生が一流大学に通えるようにアファーマティブ・アクション・プログラムを実施してきた。政府の仕事にも彼らをかなり採用してきた。たとえばカシュガル市の警官は、そのかなりの割合をウイグル族が占めている。

また中国政府は、道路や建設、電気通信ネットワークなど、これまで発展が遅れてきた新疆のインフラや主要産業への投資を拡大しているとも主張している。

しかし、政府の弾圧的な措置が、こうした試みに暗い影を落としていると批判する人たちもいる。こうした措置が、ウイグル系武装グループのトルキスタン・イスラム党(TIP)など、少数の過激派のプロパガンダをたきつけてきたというのだ。TIPの支持者の一部はシリアやアフガニスタンで活動していると見られている。ワシントンを拠点とする中東報道研究機関(MEMRI)の翻訳によれば、TIPは8月29日にオンラインマガジンを発行し、東トルキスタン(ウイグル族の多くは新疆をそう呼ぶ)での中国との闘いに備えるよう、シリアの戦闘員たちに呼びかけたという。同号のテーマは、新疆の現状と中国政府によるイスラム教徒の扱いに注意を向けることだった。

「若い世代ほど、その傾向が強く見られると思います」とDさんは語った。新疆の身内がパスポートを取得できなかったため、結婚式を延期した前述の女性だ。「彼らはより大きな怒りを抱えています」

アブドゥウェリはここ最近、ウイグル族の言葉と文化を小学生に教える児童書の完成に向けて動いている。その本のページには、Google画像検索で見つけた、著作権フリーの子ども向けイラストのクリップアートを使って挿絵が入れられている。本当は、ウイグル文化を理解しているウイグル族のイラストレーターの力が必要なのだとアブドゥウェリは語る。けれども、彼が元政治犯であるため、真に優れたアーティストたちは皆、恐怖のあまり彼と公に関わることができないという。

中国政府は2016年12月、アブドゥウェリのパスポートを突然、取り消した。これによって彼は無国籍になってしまった。アブドゥウェリは現在、アンカラにある国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)を通して難民認定を申請している。

アブドゥウェリは時々、1990年代前半に北京で過ごした大学時代のことを思い返している。当時の彼は、本当の自由の味というものを初めて噛みしめていた。そんなアブドゥウェリがいまも鮮明に覚えているのは、ある露店で一冊の中国語の本を買ったときのことだ。その本をとても気に入った彼は、洋書店まで自転車を走らせ、オリジナルの英語版を見つけてページを繰った。そして、政府の検閲官が削除した部分があることを確信した。

その本は、ジョージ・オーウェルの『一九八四年』だった。その本は彼に故郷の状況を思い出させたという。