中国が「カタルーニャ独立」問題にいち早く反対表明したワケ

MAG2, 28.12.2017

未だ解決の糸口が見えないスペインのカタルーニャ独立問題ですが、早々にスペイン政府への支持を表明したのが中国。その理由を台湾出身の評論家・黄文雄さんは、「自国のチベット、ウイグル独立運動、そして台湾独立を牽制するため」と断言しています。さらに黄さんは自身のメルマガで、「すべての国にとって国家の結束がもっとも重要」と主張する中国が沖縄と日本との分断工作を仕掛けているとの驚くべき「公安の指摘」を記しています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2017年12月26日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【中国】カタルーニャ独立阻止を支持しながら沖縄独立を煽る中国の卑劣

スペインで振り込め詐欺を行っていた中国人と台湾人269人が逮捕され、有罪判決を受けた121人の台湾人が台湾当局の抗議にもかかわらず中国本土に送還されることが決定しました。

台湾側が問題視したのは、もちろん犯罪行為の有無についてではなく、台湾人の犯罪者を中国に送るという決定についてです。台湾人の犯罪者は台湾に送還されるべきであり、それを中国に送るということは、台湾の主権を無視した決定にほかならないからです。

中国側は、このスペインの決定を歓迎すると述べました。外交部の華春瑩報道官は12月18日、北京で行われた定例記者会見で、「中国とスペインが犯罪人引き渡し条約に基づいて行った協力の重要な成果である。スペインが『一つの中国という原則を順守し、台湾籍の容疑者を中国に引き渡すことを高く評価する」と述べました。

スペインといえば、カタルーニャの独立問題で大揺れですが、中国は独立阻止に動くスペイン当局を支持しています。今年の10月30日、華春瑩報道官は「スペイン政府が国家統一を維持し、民族団結と領土の保全に努力することを理解し支持する」という声明を出しています。

中国がスペインを支持する理由は明らかです。中国のチベットウイグル独立運動、そして台湾独立を牽制するためです。実際、中国の台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室の馬暁光報道官は、11月15日、「スペイン北東部カタルーニャ自治州による独立に向けた取り組みが失敗したことは台湾の独立も失敗する運命にあることを示している」などと述べています。

このように、中国側がスペインに肩入れする姿勢を見せてきたことにより、スペイン側も中国に配慮せざるを得なくなったのでしょう。ここでスペインが台湾人を台湾に送還すれば、中国から「分裂主義者だと批判される可能性があります。

私はカタルーニャがスペインから独立することについては、あくまで当事者の問題であると考えますが、問題なのは、この問題を奇貨として利用しようとする中国の姿勢です。馬暁光報道官は「すべての国にとって国家の結束がもっとも重要」とも発言しています。

しかし、無理やり「一つの中国」にされるほうは、たまったものではありません。だからチベット、ウイグルでは独立運動が続いているのです。台湾では「ひまわり学生運動」が起こり、台湾人としてのアイデンティティ、「台湾人意識」が急速に高まっています。

華字新聞などのメディアでは、よく「五胡乱華」(五つの夷狄が中原に入って華人の後裔である漢族をホームグランドから追い出し、漢人は流民として四散したこと)にちなんで、チベット人ウイグル人モンゴル人香港人そして台湾人」まで加えて「五独乱華」という造語で称しています。

しかし台湾では、国内の四独問題はあっても、台湾の独立までも「五独」に入れるのは不適切だと異議を唱える者が多いのです。いったい台湾はどこから独立するのか、という疑問です。

中国は2005年、アメリカの国内法を真似して「反国家分裂法」をつくりました。その狙いは、台湾を中国の絶対不可分の一部であることを無理やり宣伝するためです。

私はこれをある集会で「まだ結婚もしていないのに、離婚反対を先に明文化するようなもの」と説明したことがあります。先にウソを公然と口にして、「歴史的に中国のもの」と主張するというのは、このようなやり方は中国の常套手段なのです。

台湾では「白紙黒字」(書面としてはっきり示されていること)といって、ウソにだまされるなと注意喚起をしています。

第二次世界大戦後、帝国の時代は終わり、それまで帝国の植民地にあった弱小国は次々と独立していきました。それまで約60前後だった国の数は急増し、現在はその3倍以上になりました。日本が承認している国の数は196カ国ですが、国連加盟国数は193カ国です。また、地図によっては独立国を230カ国とするものもあります。300まで増えると、数が多すぎて困ると言っている国連関係者もいます。

しかしこの流れに逆行し、むしろ周辺地域を併合し、自国領を拡大しようとしているのが中国です。チベット、ウイグルを無理やり併合したことは言うまでもありませんが、現在でも東シナ海、南シナ海を自国領に組み入れようとしています。

一方で、現在の国民国家は一民族一国家が理想であっても、多民族国家のほうが多いのも現実です。たとえば中国もベトナムも50以上の民族がいて、ミャンマーは130以上、フィリピンは180、インドネシアは380、インドは500以上ともいわれます。

スペインはカタルーニャだけでなくバスク地方の独立問題もあり、また、ヨーロッパにはイギリスのスコットランドやアイルランドの独立問題もあります。それぞれの民族をどうするのか。中国のようにすべてを「中華民族」と架空の一つの民族にすることは、ダライ・ラマが指摘するように、文化的虐殺です。中国の独善的なウソは中華世界ではまかり通りますが、世界に押し付けることができる時代ではありません

習近平は今年10月の第19回共産党大会で、祖国統一の推進を強く訴えました。そのため、台湾への侵攻もささやかれています。武力恫喝はもちろん、国際社会に対して、「台湾は中国の一部」だと認めさせようとしています。中国がカタルーニャ問題に口を出すのも、そのためです。

以前のメルマガでも書きましたが、中国は台湾の国際会議への参加を阻止するために、各国や各機関への圧力を強めています。一方で、欧州議会では先日、台湾の国際機関参加を支持する決議を採択しました。中国の思惑が挫かれた形です。

それだけに、カタルーニャ問題で中国はスペインの仲間だという姿勢をわざわざ強調しているのです。スペインのマドリードにはすでに30万人以上の中国人移民がいるとされています。スペイン国内にはチャイナタウンがいくつもできています。

また、2015年には中国のワンダ・グループがスペインのサッカークラブ「アトレチコ・マドリード」の株式を20%取得しています。また、スペインリーグでは20チーム中、中国企業が出資しているなど、何らかの関係を持つクラブは16に達するとされています。

中国人移民により相手国にコミュニティをつくりさらに投資という形で入り込んで影響力を強めていくというスタイルは、いつもの中国の手です。「一帯一路」も、そのやり方が各国で反発を招いていることは、これまでのメルマガでもお伝えしてきました。

スペインでも同様のことが進行中であり、今回の台湾人犯罪者の中国移送も、こうしたことが影響を及ぼした可能性もあります。

スペインでは2013年、亡命したチベット人が中国のチベット人虐殺を裁判所に訴え、江沢民や李鵬などに逮捕状が出たことがありました。中国政府は当時、スペインに対して抗議しましたが、カタルーニャ問題で中国が擦り寄ってきていることで、スペイン側のチベット人に対する人権や自治などの意識への影響も懸念されます。

● スペイン裁判所が江沢民氏など5人に逮捕状、中国は強い不満=胡錦濤氏にも同様の訴え―米華字メディア

一方、日本に対して中国は、沖縄を中国の奪われた固有領土だと唱え領有権を主張するようになってきています。人民日報系の環球時報は「琉球の帰属は未定」と主張し、中国の各団体は沖縄で「琉球独立を求める団体関係者などと関係を深めています。そのことは、公安調査庁も指摘しています。そして、沖縄という呼称は使うべきではなく、「琉球」と呼ぶべきだとも主張しているのです。

カタルーニャ問題では「すべての国にとって国家の結束がもっとも重要」と主張する中国が、沖縄と日本との分断工作を仕掛けているわけですから、ご都合主義もいいところです。こうした世界各国で中国が行い、発言しているさまざまな欺瞞について、日本人はもっと目を光らせる必要があります。

今回のまとめ

  • スペインで有罪判決を受けた121人の台湾人が中国本土に送還されることに。カタルーニャ独立運動に関してスペインを支持する中国に忖度か
  • 中国はカタルーニャ独立問題を、自国のチベット・ウイグル独立運動や台湾独立を牽制するため奇貨として利用
  • 「すべての国にとって国家の結束がもっとも重要」とする一方で沖縄の独立を煽るご都合主義ぶりを見せる中国に日本人はもっと目を光らせるべき

image by: Flickr

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2017年12月26日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実』(2017年12月12日号)より一部抜粋