米、中国の人権弾圧を糾弾 迫害逃れてきた北朝鮮国民をも犯罪者扱いする苛酷さ

産経新聞 2016.10.15

米国の国政は大統領選挙に激しく揺れ、オバマ政権も末期を迎えて、すっかり機能を低下させたようにもみえるが、一部ではなお堅固な継続性を実感させられた。10月上旬に中国政府の人権弾圧をまとめて糾弾した「中国に関する議会・政府委員会」の活動である。

同委員会は2000年に特別立法で設置され、中国の人権状況を精査して米国側の対中政策に反映させることを任務とする。立法府、行政府両方の代表で構成される。その今年の年次報告書は習近平国家主席の下での共産党政権が自国民の人権をかつてない規模と激しさで弾圧する実態を迫力ある記述で伝えていた。

その総括の主要点は以下だった。

第一の特徴はイデオロギーの強制画一で、共産党の政治思考に絶対の忠誠を示さない動きはすべて厳しく抑圧され、懲罰を受けるという。今年2月には官営紙主筆が当局への批判や提案を自由にすべきだと主張して即座に制裁を受けた。

第二は共産党独裁体制に合致しない思考を「中国の復活に反する危険な外国の価値観」として排する動きだという。習近平政権は「中国の夢」の名の下に巨大な野望を語る際、民主主義などの国際的な普遍思想を「中国を害する外国思想」として敵視する。

第三は自由で平等な市民社会の概念を国家安全保障への脅威と断じる動きだという。中国当局が今年4月に施行した外国の非政府機関(NGO)規制の法律は中国社会で自主的に活動する団体や個人を「中国の民族の団結を乱し、国家の安全を害する」と断じた。

第四は共産党支配を正当化する法律の選別的な利用だという。中国当局は今年5月、人権尊重を主張した中国人の弁護士や活動家計約20人を逮捕したが、その法的根拠として「国家治安を危うくした」という法律の規定を適用した。当局は独自に法律を作り、その一部を政府批判分子の弾圧に利用するという。

第五の特徴は経済不安と労働争議への二重の弾圧だとされる。最近の中国は経済面の不安や労働者の不満が共産党統治の正当性に影を投げているが、共産党政権は労働者の不満を直接に抑圧すると同時に経済の不調を伝える中国メディアの報道を厳しく規制し、実際よりもバラ色の構図を投射させているという。

同年次報告書は以上の特徴を指摘する一方、人権弾圧の具体的な細部を合計約350ページにわたって詳述していた。国際的な意味あいの強いチベット人やウイグル人への弾圧の強化も多数の最新の実例があげられていた。

外国関連でとくに注視されたのは中国当局による北朝鮮国民への苛酷な扱いで、以下の記述があった。

中国領内に入った脱北者は原則としてみな拘束し、本国へ強制送還している▽中国には難民や亡命者を保護する法律がなく迫害を逃れてきた人をも違法入国として犯罪者扱いする▽中国の国境警備強化のため、脱北者の韓国への亡命が11年以来、減少を続けている▽北朝鮮からの中国入国は女性が圧倒的に多く、人身売買がなお増えている。

米国のこうした中国の人権弾圧への批判は課題の普遍性を考えれば、日本でも表明すべきではないか。(ワシントン駐在客員特派員)

http://www.sankei.com/world/news/161015/wor1610150025-n1.html