【世界ウイグル会議・カーディル議長】会見詳報 「中国の弾圧は国家テロ」「国連はなぜ黙っているのか…」

産経新聞 2015.10.28

 亡命ウイグル人組織を束ねる「世界ウイグル会議」のラビア・カーディル議長が10月20日に都内の参院議員会館で記者会見を開いた。カーディル議長の主な発言とやり取りは次の通り。

 《世界ウイグル会議は2004年に設立された。ノーベル平和賞候補にのぼる一方で、中国政府が「分離独立主義者」「テロリスト」と非難するカーディル氏。発言は全てウイグル語で行われ、同会議日本・東アジア全権代表のトゥール・ムハメット氏が通訳を務めた》

「国連は大国のやることにはノータッチ」

 「習近平(国家主席)が政権を取ったこの2年あまりはウイグルに対する弾圧が一段と激しくなっている。政権は弾圧を隠蔽しているが、まったく抵抗しない普通の農民や市民らを殺害している」

 「私は国連に驚いている。歴史的な問題を彼らは追及するが、現在行っている殺戮(さつりく)に対してはなぜ黙っているのか。なぜ現在進行形の問題については追及しないのか。大国のやっていることには何もタッチしないという態度なのか。中国当局はウイグルの資源を略奪し、その金を世界にばらまいて、民族浄化を正当化している」

 「今、彼らはウイグル人に対する銃殺の権限を末端の警察官に与えている。2001年の米中枢同時テロ以降、反テロを利用して無実のウイグル人を大量に逮捕し、テロ分子を処刑したという名目で人権侵害を行っている」

 《中国政府高官は今年3月、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国(IS)」に、「新疆の一部のテロ分子」が参加していると言及した》

 「世界各地からいろんな人が中東に(戦闘員として)渡航している。そのことで出身国がテロ国家とされることはない。正確な情報はわからないが、ウイグルからも何人かがそこに入り込んだ可能性がある。私たちウイグル人は2千万人の人口を持つ大きな民族だ。中国は弾圧を正当化するためにIS問題を利用しているだけだ。自分たちの人権を守る戦いは、決してISとは同じものではない」

 「私たちのすべての抵抗は、まったくテロとは無関係だ。中国当局はウイグル人を毎日殺し、無実の人を数万人単位で投獄している。これはどうしてテロといわれないのか。国際社会のテロに対する基準ははっきりされるべきだ。“国家テロ”によって抑圧されている民族の状況を考慮すべきだ。人権侵害を激しく受けている民族の抵抗をテロに結ぶ付けるのはとても理不尽なことだ」

 《カーディル氏は、未婚女性の強制移住によりウイグル民族の“浄化”が進められていると訴える》

 「私たちは長い歴史と独自の文化を持ち、人種的にも中国とまったく違う。私たちの美しい文化文明を中国はつぶしてきている」

 「中国当局はわれわれを浄化するひとつの手段として、未婚のウイグル人女性を就職の名目で中国本土に強制連行している。それを阻止しようとしたウイグル人たちはさまざまな名目で弾圧を受けている」

 「一方で中国政府は中国人を百万単位で(新疆ウイグル自治区に)移住させている。彼らは就職も資源開発も何をやっても自由だ」

 《企業家だったカーディル氏は、中国の国政諮問機関「全国政治協商会議」の委員在職中に中国指導部を批判して投獄。05年に釈放され、米国に移っている》

 「中国当局は最近、国際警察にラビアはテロリストだとアピールしているようだ。私はウイグル人に、平和的な手段に訴えることを呼びかけている」

「無実の若者が刑務所にあふれている」

 《国家分裂罪で無期懲役が確定したウイグル族学者、イリハム・トフティ氏にも話は及んだ》

 「トフティ氏はウイグル人と中国人との平和共存を主張する大学の教授だ。そういう方でさえも投獄されて無期懲役となった。この件からも、ウイグル人がいかにひどい対応を受けているかわかると思う。何の罪もないウイグルの若者たちが中国の刑務所にあふれている」

 「私たちの街は中国の軍・警察であふれている。ウイグルにおける著しい人権侵害が日本でも話題になり、国会や日本政府もこの問題に関心を寄せることをお願いするため、今回日本を訪問した」

 《カーディル氏の約20分の発言に続き、質疑応答が行われた》

 --日本政府へのお願いという話だが、政府の反応は

 「国会議員の方に私のお願いを伝えた。みなさんは真摯(しんし)に受け止め、国会の中でこの問題を議論し、対応するという約束をしてくれた。今後いい方向にいくのではないかと思っている」

 《記者会見前、参院議員会館ではカーディル氏らと国会議員との懇談が行われていた》

 --国会議員との懇談ではどのような言葉を交わしたのか

 「議員の皆さんからは、外務省がウイグル問題をきちんと扱うべきではないかという意見があった。また『ラビアさんはウイグル民族の象徴的なリーダーであり、平和的な方向でウイグル問題を解決していく上では(チベット仏教の最高指導者)ダライ・ラマ法王と同じような役割を果たすのではないか』と大変高く評価していただいた。日本におけるウイグルの人権問題は、より広く深く扱われる条件が整ったのではと考えている」

「最も犠牲者が多いのが習政権」

 --現在投獄されているウイグル人の数は

 「中国の弾圧はすさまじく、公表されているデータの統計では(中華人民共和国成立後の)66年間で百数十万人の犠牲を出している。最も犠牲が多かった期間の一つが習近平政権の2年余りだ。1964年から始まった原爆実験の犠牲者も入れると莫大な数になる」

 《中国では自治区内で武装グループが警察署などを襲撃、鎮圧されたとの報道がしばしば流れるが、カーディル氏は異を唱える》

 「2014年7月にカシュガル地区ヤルカンド県でイスラム教のラマダン(断食月)明け直前に、12人の女性や子供たちがある家に集まり、夜のお祈りをささげていた。中国当局は宗教活動を非合法化して取り締まっており、ある村人がこれを密告。警察の特殊部隊が押し入り、その家の幼児からお年寄りまで殺害してしまった。役場に抗議にいった男性たちも殺害され、さらに広まった抗議活動に対しても無人機を使って相当な数を殺害した。ヤルカンドで殺害されたのは2千人以上といわれている」

 --中国ではテロ対策を強化する「反テロ法」が審議され、近く成立する見通しだが

 「ウイグル人もテロに反対している。しかし中国の反テロ法は彼らの“国家テロ”を正当化するためだ。ウイグルの人権問題を直視し、その行為を阻止しなければ将来は国際社会も中国の脅威を受けることになる」

 オメル・カナット副議長「彼らは反テロ法によって、本来テロの範囲に入らない事柄もテロと定義し、合法的に、より広い範囲で激しく弾圧できる法律をつくろうとしている」

 --8月にタイ・バンコクで起きた爆弾テロ事件で、ウイグル人とみられる人物が逮捕されたが

 「私たちは本当に真相がわからない。もしウイグル人がそれをやったのであればわれわれは激しく非難する。罪のない人たちが殺されることは痛ましい」

 --タイ政府が亡命ウイグル人を中国に強制送還したことが事件の背景にあるとの見方もある

 「これまでは東南アジアを逃亡先に選んだことはなかったが、あまりにも弾圧が激しく、われわれとはつながりのない東南アジア諸国を亡命先として選んで逃げた。この2年間で1万人近いウイグル人が家財を手放し家族全員で逃げるという道を選んだ」

 「熱帯のジャングルの過酷な環境の中で逃亡生活をし、一部の人たちは現地の政府から投獄されるなどの悲劇も起きている。彼らは母国では犯罪を起こしたこともない普通の人たちだ。人身売買の組織に金を払って東南アジアに逃げたわけだが、大多数は外国語能力はゼロで、現地の言葉もわからないし国際情勢の知識もない。彼らの一部がタイの当局に投獄され、幼い子供たちが何人も死んだ」

 「行き場を失ったウイグル人が大量にさまよい、いろんな人たちが彼らをだましたり誘拐したりした。彼らの運命は犯罪集団に決められた。中国も外交力と経済力をつかってこの問題に介入し、ウイグル人を中国に強制送還させた」

http://www.sankei.com/premium/news/151020/prm1510200014-n1.html