宗教弾圧

中国政府は、ウイグル人の言語・歴史・文化・宗教を徹底して弾圧し、ウイグル文化やウイグル民族そのものを完全に抹殺しょうとしている。ウイグルの民族アイデンティティを否定する民族浄化政策の結果、シルクロードの主な文化を作り上げたウイグル人は今や絶滅に瀕している。

ウイグル人とイスラム教

ウイグル人とイスラム教の接触は紀元9世紀当初から(当時アラブ帝国の支配下に置かれイスラム教を受け入れた中央アジア・西トルキスタンに暮らすトルコ系諸民族の同胞たちとの交流の影響で)始まっていたが、当時は、ウイグルの一部の一般庶民がイスラム教を受け入れただけで、ウイグルの支配者階層(王族階層)の間では受け入れていなかった。

ウイグル・カラハン王朝(紀元850~1212、首都:カシュガル)の王族階層の中で最初にイスラム教を受け入れたのは王子のスルタン・サトク・ボグラハン(ウイグル・カラハン王朝の創始者コル・ビルゲ・カラハンの孫)であり、彼は紀元920年にアトシュでアッラーの神に対する信仰の告白を行い、イスラム教を受け入れた。そして、同年に23歳で国王に即位し、ウイグル人社会でのイスラム教の普及に全力を尽くした。それから40年後の960年には、国王のスライマン・アルスランハン(スルタン・サトク・ボグラハンの息子)はイスラム教を国教に定めた。これは、ウイグルの歴史における一つの重大な出来事であり、世界中で数多くあるトルコ系諸民族の中で初めてイスラム教を国教として定めたトルコ系国家として歴史に刻まれることになった。

それ以来、ウイグル人は今日までイスラム教を信仰し続けてきた。しかし、共産中国による数々の圧力や弾圧によって、1000年以上も続いてきたウイグル人のイスラム教信仰は深刻な危機に直面している。

無神論教育の強制

イスラムの信仰の基幹の中でも、最も核心とされるのはアッラーの神の存在と唯一性を心から信じ、唯一神アッラーへの信仰の告白である。しかし、共産中国支配下の今の東トルキスタンでは、小学校から大学までの全ての教育過程において無神論の教育が強制され、神の存在すら否定され、神(および宗教)を信じることが禁止されている。つまり、中国当局は、ウイグル語もイスラムの教えも禁止する「中国共産党絶対化教育」を徹底しているわけである。

そのため、ウイグルの子供たちが一般の学校では宗教について一切学ぶことができない。ウイグル人が神学校を作り、子供たちにイスラムの教えを伝えることも厳しく禁じられており、見つかった瞬間に学校を強制閉鎖し、先生や生徒たちをともに逮捕している。一方で、小学校から大学まで、そして、その後の職場でも宗教心のある人間が常に敵視され、いつか当局の被害にあってしまう可能性が極めて高いため、ウイグル人の親たちが自宅で子供に宗教の知識を教えるのも怖くてなかなかできないのが現実である。ちなみに、ウルムチにある「新疆イスラム学院」は、国際社会(特にイスラム諸国)の目をだますために、政治利用目的であえて作っておいた飾り物に過ぎない。

モスクを建てるためにも、モスクに入るためにも政府の許可が必要

モスクの門の上の通告には、ウイグル語で「以下の者がモスクに入り宗教的な行事に参加することを禁止する。一、共産党員・共産主義青年団員。二、国家職員・労働者・退職者。三、十八歳以下の青少年。四、地方政府・村の役所などの職員。五、女性。」と書かれている。

モスクの門の上の通告には、ウイグル語で「以下の者がモスクに入り宗教的な行事に参加することを禁止する。一、共産党員・共産主義青年団員。二、国家職員・労働者・退職者。三、十八歳以下の青少年。四、地方政府・村の役所などの職員。五、女性。」と書かれている。

イスラム教の場合、礼拝をはじめとする様々な宗教的な行事の多くがモスクで行われる。しかし、共産中国支配下の今の東トルキスタンでは、ウイグル人が必要に応じて自由にモスク建てることは許されていない。それどころか、最近では多くのモスクが 「違法建築」などの口実で強制的に破壊されている。

さらに、ウイグル人の場合、政府が自ら承認したそのモスクにも誰でも自由に入れるわけではない。東トルキスタン(特に、カ シュガル、ホータンなどウイグル人の大多数が居住する南部地域)では、左記写真のような通告が各モスクの入り口(又は壁) に貼ってあり、イスラムの五つの行のうち最大の柱である礼拝を含む一切の宗教的な行事に参加できる人を厳しく制限しているのである。なお、この通告には明記していないが、18歳以上の成人でも大学生や学校の教員たちもいかなる宗教的な行事に参加することが事実上絶対に許されないのである。つまり、モスクに入り礼拝を含む宗教的な行事に参加することが許されているのは、18歳以上の農民と個人経営者と無職の男性のみになっているわけだ。ちなみに、同じくイスラム教を信仰する回族の場合そのような通告などが存在しない。

なお、共産党員、共産主義青年団員、国家職員、労働者、地方政府・村の役所などの職員、学生、教員などは自宅で礼拝するのも禁じられており、発覚された必ず処分を受けることになっている。

イマームに対する洗脳教育と監視

ウイグルの場合、各モスクのイマーム(礼拝など宗教的な行事に関する宗教指導者)が政府によって指名されている。本来なら、その町・村で最もイスラム教の学問に通じた人がその町・村のモスクのイマームに(住民によって)選ばれるべきである。しかしウイグルの場合は、様々な政治学習を通じて所謂「愛国教育」や「マルクス主義教育」などの洗脳教育を合格し、共産党に忠実であり共産党の指示に確実に従う人物であると判断された人に限ってモスクのイマームに(政府によって)指名されるようになっている。住民にはイマームを自由に選ぶ権利が事実上認められていない。

さらに、各モスクのイマームの言動も政府が操作するようになっている。そのため、各モスクのイマームは、イスラムの教えに関する説教内容や解釈の仕方などについて、イスラムの学問的な考え方やイスラム法の決まりではなく政府の指示に従わざるを得ないのが現実である。なお、定期的に政治学習を受け、モスクで共産党の政治宣伝を行うことや、モスクに出入りした人々の言動を監視するのも各モスクのイマームの義務になっている。逆に、各モスクのイマームが政府の指示に忠実な言動をとっているかどうかも厳しく監視され、外れた発言などが密告された場合処分を受けることになっている。

モスク・学校・職場に対する監視

(1)日常礼拝に対する監視

政府職員によるモスクに対する厳しい監視が日常的に行われている。地域によって(特に、カシュガル、ホータンなどで)は、モスクに誰が来て誰が去ったのかを毎日記録し、禁令を破ってモスクに入った者を随時報告する監視システムが徹底されており、禁令を破ってモスクに入った者は処分を受けることになっている。

(2)金曜礼拝に対する監視

全世界のイスラム教徒と同じように、金曜礼拝が特に重視され、金曜日にモスクで礼拝を行うことがウイグル人の日常生活の一部になっている。勿論、金曜礼拝の場合であっても、上記の禁令の対象にされている人々は参加できない。親友に合うとか親戚を訪問するとかの理由で他の町に行っているときでも、金曜日になればその町のモスクに行くのが普通である。しかし最近、そうした場合に何の理由もなく拘束されるケースが見られるようになっている。つまり、地域によっては、禁令対象ではないウイグル人でも、隣の町のモスクに行くことさえ自由にできないというのが現実となっている。

さらに、地域によって(特に、カシュガル、ホータンなどで)は、小学校~高校では、学生や教員たちがモスクに行って金曜礼拝に参列するのを防ぐための措置として、毎週金曜日の昼休みを取りやめたり時間をずらしたりして、金曜礼拝の時間帯に学生や教員全員が必ず構内にいることが義務付けられている。そして、地域によっては、毎週金曜日に教員たちが当番で決められたモスクの門の前に立たされ、自分が勤務する学校の学生や教員がモスクに入り金曜礼拝に参列していないかを監視し報告することに当たらされている。

(3)断食明け(ラマダーン)祭りや犠牲祭などの祭りの礼拝に対する監視

一年に一度の大きな祭りである断食明け(ラマダーン)祭りや犠牲祭の時にモスクで礼拝に参列するのが世界中のイスラム教徒にとって共通の重大イベントである。しかし、東トルキスタンでは、上記の禁令の対象にされているウイグル人はこれらの祭りの礼拝に参列することも許されていない。大量の職員や警察が監視にあたるため、「せめて一年に一度の祭りの礼拝にだけは参列したい」という気持ちで密かにモスクに行ったりして被害にあってしまうケースも少なくない。

それだけではない。地域によっては、学校や多くの職場で、ウイグル人女性のスカーフや長いスカート姿、ウイグル人男性の口ひげやあごひげ姿が「宗教色のある服装・姿」とされ、禁止令が出されているケースもある。

ラマダーン(断食)は厳しく制限

イスラムの五つの行の一つにラマダーン(断食)がある。中国当局は毎年断食期間中にウイグル人公務員、共産党党員、教員、 学生などの断食を禁止する措置をとってきている。近年は更に、各地の職場や学校で全てのウイグル人職員や学生に対して断食を禁止すること、それを守らなかった場合に処分を受けることなどが通告されており、宗教行事への不参加を約束する文章に署名することをひとり一人に強制している。

さらに、各地の職場で全てのウイグル人職員に対して、断食期間中に限って無料の「集団昼食」を強制し、一人ひとりが断食しているかどうかをチェックしている。また、イスラム世界では(皆が断食に入ってしまい、客がいなくなることもあり)断食期間中に飲食店・レストランなどの昼の営業を停止するのが一般的だが、ウイグル人が経営する飲食店・レストランなどの昼の営業停止は許されていない。断食期間中に昼の営業を停止した場合、営業許可の取り消しや罰金などの刑が科せられている。

メッカ巡礼は厳しく制限

イスラムの五つの行の一つに聖地メッカの巡礼がある。世界中のイスラム教徒にとって、充分な体力、時間、資力を備えるムスリムは、少なくとも一生に一度はこれを実行しなければならないというイスラムの決まりになっている。しかし、共産中国支配下にあるウイグル人の場合は、「中国共産党に信用されているムスリムであること」との条件が欠かせないことになっている。

ウイグル人の場合、メッカ巡礼に行ける人の数も極端に制限されており、政府による様々な政治面でのチェックに合格した高齢者に限定されている。全ての条件を満たした人でも個人で自由にメッカ巡礼に行くことは許されていない。また、政府が組織した巡礼団体に入った人は、巡礼前と巡礼後に必ずウルムチで一定期間の政治学習・洗脳教育(特に、現地の政治情勢を外国で口にしないこと、逆に外国の政治情勢を国内で口にしないことなどの政治学習)を受けなければならない。巡礼には公安の人が複数人必ず同行し、ウイグル人巡礼者の言動を監視することになっている。なお、ウイグル人巡礼者の場合、帰国したら真っ先に必ずパスポートが強制的に回収される。

さらに、ウイグル人の場合、一般人が親戚訪問・商売・留学などで外国に行くときでも、必ずメッカに行かないことを約束する文章に署名し、宗教事務局から「安全な人である」との許可をとり、多額(数千元から数万元)のお金を保証金(メッカに行った場合は、帰国後も返還されない)として政府に預けなければならないのである。

上記のいずれかに従わない、または反発・不満を表した者は全て「違法宗教活動」を行ったとされ、所謂「三悪勢力(民族分裂主義者、宗教過激主義者、テロリスト)」のレッテルが貼られ、罰金、退学、免職、拘束、逮捕などの刑罰が科せられている。

ウイグル人は所謂「中華民族」と全く異なる言語と宗教・信仰を持っており、ウイグル語とイスラム教信仰がウイグル人の民族アイデンティティの基礎部分でもある。そのことを十分に認識している中国当局は、ウイグル語もイスラムの教えも禁止する「中国共産党絶対化教育」を徹底することによりウイグル人の民族アイデンティティの基礎部分をぶっ壊すことを狙っている。その手段として、様々な名目でウイグル人の信仰の隅々まで介入し、従わない聖職者を容赦なく追放している。いかなる宗教活動やコミュニティを強制的に共産党の指導下に置き、反抗する者を「三悪勢力」と見なして徹底弾圧している。その高圧的姿勢が東トルキスタンでウイグル人の猛反発を招いているのが現実である。

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